2024 05,19 08:56 |
|
2007 12,18 00:01 |
|
おそらく今年最後の劇場鑑賞作品。年の締めくくりなので、下手な映画は観たくないと散々悩み、大好きな『小さな中国のお針子』のダイ・シージエ監督の最新作を選んでみた。
公式サイト 製作国=カナダ・フランス 姉の評価=★★★★★ 悲しく、そして素晴らしい作品だった。同性愛をタブーとする中国を舞台に、二人の娘の甘く切ない恋物語を描いている。しかし、同性愛という二人の境遇を無駄に煽り立てる風も、性愛の自由もない中国という国を糾弾している風もない。ミンとアンの思いは、幼稚で、情熱的で、純粋で、初恋をしていた頃の自分自身に深く重なるものを感じる。チラシによると、シージエ監督はこの作品を「どこにでも、いつの時代にでもある愛の物語を描いた」としているが、まさにその通りだと思った。 厳格な父のもとで育ったアンと、孤児院出身のミンは、それが当然の成り行きであるかのように恋に落ち、愛し合う。官能的で美しい演出の中で描かれる二人の姿は、とても無邪気で幻想的である。しかし、無邪気だからこそ、情熱的だからこそ、愛は不幸を招くこともあるというのを、二人は知らない。二人の幼稚な情熱は、彼女たちだけではなく、周囲の人間たちまで巻き込んで破滅へと向かっていく。一緒にいたいと純粋に願う二人の想いが招く取り返しのつかない不幸を思うと、切なく、やるせない思いに囚われる。自分たちの感情に精一杯で、その時の思いだけが全てで、それらが生み出す結果や、周囲の人間に及ぼす影響など、まるで想像も出来ない・・・初恋など、誰にとってもそんなものだ。彼女たちの場合、それがたまたま女同士だったから、たまたま中国だったから、アンの家族まで不幸のどん底に陥れる結果になってしまった。自分たちのいる国、自分たちの環境にまで考えが及ばないほど、彼女たちはひたむきで真っ直ぐだった。そんな彼女たちを、人事のように眺めることは、私には出来ない。 ジーシエ監督は、そんな二人の「どこにでもある愛の物語」を、それこそ純粋に描きたかったのだろうと思う。この作品は、中国国内でのロケが許されず、当然公開もされなかったという。しかし前述したとおり、作中に中国の風潮を非難する節は、まるで見当たらない。映像美溢れる素晴らしい作品なのに、とても残念である。 ただ、ちょっと難しかったかな、と思う部分もなくはない。この作品、ロケは中国らしい風景のあるベトナムで行われたとのこと。ベトナムの熱気溢れる風土が二人の情熱や官能の世界を守り立ててはくれているのだが、やはりそう言われてしまうといまいち「中国」に見えなくなってしまう。特に前作の『小さな中国のお針子』のロケが中国で行われており、その荒々しくも神々しい描写に圧倒された記憶があるから尚更・・・。勿論、これはシージエ監督の責任ではないのだが。 また個人的に忘れられないのが、ミンが「母親みたいな髪型にする」と言って、中国人風の髪型からショートヘアにしたとたん、ロシア人のような容姿になったあの瞬間。自分のアイデンティティーを取り戻し、アンとの関係も高らかに宣言したように見えた。 やるせない思いに胸が締め付けられそうになったが、一年の締めくくりに出来の良い、完成度の高い作品を鑑賞したいという願いは充分かなえてもらった。シージエ監督を信じて本当に良かった。公開は始まったばかりなので、興味のある方は是非劇場へ。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |