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2007 12,18 00:01 |
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おそらく今年最後の劇場鑑賞作品。年の締めくくりなので、下手な映画は観たくないと散々悩み、大好きな『小さな中国のお針子』のダイ・シージエ監督の最新作を選んでみた。
公式サイト 製作国=カナダ・フランス 姉の評価=★★★★★ 悲しく、そして素晴らしい作品だった。同性愛をタブーとする中国を舞台に、二人の娘の甘く切ない恋物語を描いている。しかし、同性愛という二人の境遇を無駄に煽り立てる風も、性愛の自由もない中国という国を糾弾している風もない。ミンとアンの思いは、幼稚で、情熱的で、純粋で、初恋をしていた頃の自分自身に深く重なるものを感じる。チラシによると、シージエ監督はこの作品を「どこにでも、いつの時代にでもある愛の物語を描いた」としているが、まさにその通りだと思った。 厳格な父のもとで育ったアンと、孤児院出身のミンは、それが当然の成り行きであるかのように恋に落ち、愛し合う。官能的で美しい演出の中で描かれる二人の姿は、とても無邪気で幻想的である。しかし、無邪気だからこそ、情熱的だからこそ、愛は不幸を招くこともあるというのを、二人は知らない。二人の幼稚な情熱は、彼女たちだけではなく、周囲の人間たちまで巻き込んで破滅へと向かっていく。一緒にいたいと純粋に願う二人の想いが招く取り返しのつかない不幸を思うと、切なく、やるせない思いに囚われる。自分たちの感情に精一杯で、その時の思いだけが全てで、それらが生み出す結果や、周囲の人間に及ぼす影響など、まるで想像も出来ない・・・初恋など、誰にとってもそんなものだ。彼女たちの場合、それがたまたま女同士だったから、たまたま中国だったから、アンの家族まで不幸のどん底に陥れる結果になってしまった。自分たちのいる国、自分たちの環境にまで考えが及ばないほど、彼女たちはひたむきで真っ直ぐだった。そんな彼女たちを、人事のように眺めることは、私には出来ない。 ジーシエ監督は、そんな二人の「どこにでもある愛の物語」を、それこそ純粋に描きたかったのだろうと思う。この作品は、中国国内でのロケが許されず、当然公開もされなかったという。しかし前述したとおり、作中に中国の風潮を非難する節は、まるで見当たらない。映像美溢れる素晴らしい作品なのに、とても残念である。 ただ、ちょっと難しかったかな、と思う部分もなくはない。この作品、ロケは中国らしい風景のあるベトナムで行われたとのこと。ベトナムの熱気溢れる風土が二人の情熱や官能の世界を守り立ててはくれているのだが、やはりそう言われてしまうといまいち「中国」に見えなくなってしまう。特に前作の『小さな中国のお針子』のロケが中国で行われており、その荒々しくも神々しい描写に圧倒された記憶があるから尚更・・・。勿論、これはシージエ監督の責任ではないのだが。 また個人的に忘れられないのが、ミンが「母親みたいな髪型にする」と言って、中国人風の髪型からショートヘアにしたとたん、ロシア人のような容姿になったあの瞬間。自分のアイデンティティーを取り戻し、アンとの関係も高らかに宣言したように見えた。 やるせない思いに胸が締め付けられそうになったが、一年の締めくくりに出来の良い、完成度の高い作品を鑑賞したいという願いは充分かなえてもらった。シージエ監督を信じて本当に良かった。公開は始まったばかりなので、興味のある方は是非劇場へ。 PR |
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2007 12,15 00:07 |
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だいぶご無沙汰をしてしまいました。体調不良や短期バイトを始めた関係で、すっかり更新ができなくなってしまい・・・。何より最近、映画を観ていないのが致命的。相変わらず映画は大好きだし、映画雑話のネタがないわけじゃないんだけど・・・
そんな中、久しぶりに劇場に行った。時間の都合で選んだら、日比谷シャンテの『マリア』になった。 公式サイト 製作国=アメリカ 姉の評価=★★★ ちょっと辛口かも?と、首をかしげながら★三つ。原題は『The Nativity Story』(キリスト降誕物語)。良くも悪くもタイトル通りの映画かな、というのが正直な感想。誰でも知っている聖書の物語を、丁寧に、壮大になぞってる・・・だけの映画、と言った感じ。クリスマスのシーズンに、「クリスマスって、元々どんな日」なのかを学ぶのには良い教材かもしれないが、映画作品として訴えかけるものが感じられない。キリスト誕生の物語を通じて何を描きたかったのか、製作者の“声”が伝わらない。キリスト誕生の奇跡を描きたかったのか、イエスを身ごもったマリアの受難を描きたかったのか・・・ある意味非常に残念な映画である。 個人的に一番残念だと思うのが、ヨセフの描写がしっかりなされていたことだった。キリスト生誕の物語と言えば、大体はマリアがメインになるが、この作品は、マリアの夫(婚約者)ヨセフも、マリアと同等に描かれている。処女であるはずのマリアの受胎に苦しみながらも受け入れ、夫として献身的にマリアを支える姿に、涙が出そうになった。ヨセフ役の俳優さんの演技も素晴らしかった。もっと、マリアとヨセフの夫婦愛に焦点を当てるか、あるいは『ヨセフ』というタイトルで、ヨセフが主人公の脚本を起こしてくれるかしていれば、この上なく感動できる作品になっていたのではないだろうか、と。 最も、私がヨセフにこうも肩入れしてしまうのには他に理由があるのかもしれない。子供の頃、キリストの伝記本を読んだ。その時「若者イエスは父親の元で立派な大工になった」という一説に、とても感動した。「ヨセフはすごいなぁ。自分の子供じゃないイエスを、自分の子供のように育てたんだぁ。」と、その一文から感じたからだ。劇中、神の子を宿したと言うマリアの言葉を信じ、「僕の子だと言えば良い」と言ってくれたヨセフに、当時の感動を思い出した。神は、マリアを母親に選んだわけではなく、ヨセフを父親に選んだのではないのだろうか、とすら思ってしまった。 この作品で一番楽しみにしていたのは、マリア役のケイシャ・キャッスル=ヒューズである。『クジラの島の少女』から、ずいぶん成長してしまったものだ。初盤、友達と遊んでるのが楽しい盛りの女の子だったマリアが、突然の受胎告知に戸惑う姿はよりリアル。聖書のマリア像とはだいぶ違うのではないのだろうか。勿論彼女の戸惑いを等身大に感じる、良い演技だったと思う。ついでに言うと出産シーンも比較的リアル。実生活でも一児の母のケイシャちゃん。この撮影は多分出産後に行われたものだろう(笑) 散々書きたいことを書いてしまったが、この手の映画が好きな方なら楽しめるのではないだろうか。今度は是非、ヨセフが主人公の映画を観たいものだ。 |
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2007 11,29 00:20 |
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久しぶりにロシア映画を観た。
公式サイト 製作国=ロシア 姉の評価=★★★★ ものすごぉぉぉく甘口の評価にして★四つ、と言った感じ。面白かったし感動もしたが、個人的にどうにも納得のいかない部分も多かった。これは実話を基にした作品ということだが、それにしてもこの邦題は感傷的過ぎる気がする。これは『この道は母へとつづく』なんて気負いした映画ではなく、人情溢れるエンターテイメント作品である。 以下、一部ネタバレを含むので、お嫌じゃない方だけ反転してどうぞ。 主人公ワーニャは孤児院に住む少年。養子縁組が決まったが、どうしても母親に会いたくて脱走する・・・という話。本編は、一体どこまでが実話でどこからが脚色なのだろうか。個人的に納得いかないのは、ラストシーン。(ネタバレ)ちょっとご都合主義が過ぎるのではないかと思う。手続き上既に養子となっているワーニャが、そう簡単に別の子と交代できるものなのだろうか。日本のお役所ですら融通利かないのに、ましてやロシアじゃ・・・。また、ワーニャが母親と再会した後、母親と幸せそうに暮らしているような描写があったことも納得いかない。子供を捨てた・親に捨てられたという経緯がある二人。親にも子供を捨てるだけの理由があったはずだし、ワーニャには、一度捨てられたというわだかまりがあるはず。親子の信頼を失っていた6年間が、そう簡単に取り戻せるとは思えない。あのラストは、どこまでが実話なのだろうか。それを知らないことには素直に感動することが出来ない、というのが本音である。 しかし、ワーニャが母親を捜し求める過程にだけは心打たれた。世の中、酷い人間ばかりだが、それと同じぐらい、善意を持っている人間だっている。その善意の連鎖がワーニャを母親へと導いてくれる。ラスト、その善意の連鎖が無駄にならなくて本当に良かったな、とは思った。私がこの作品を“人情溢れるエンターテイメント”だと感じた理由はそこにある。ご都合主義感は拭えないが、「そうなって欲しい」ラストまでの道のりに、スリルとあたたかい気持ちを沢山盛り込んでくれていた。(ネタバレここまで) 原題は『ITALIANETZ』(イタリア人)。このタイトルには、孤児たちを取り巻くロシアの過酷な状況が盛り込まれている気がする。貧しい国の孤児を、外国人がドルで「引き取る」という話は聞いたことがある。そういう子供たちの一部が、臓器移植に使われることもある、ということも。そういう意味も込めて、『この道は~』なんて感動を前面に売りにしたタイトルにはして欲しくなかった。流石に「ザ・イタリアン」なんてのじゃ訳が判らないが、もっといいタイトルはなかったのだろうか・・・。 |
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2007 11,07 23:46 |
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ここのとこ、こちらの更新がまるっきりだったのに、我ながら驚いてしまった。映画への情熱は勿論変わらないが、娘の保育園のことや我が家の財政難のことなどで頭がいっぱいで、こちらがすっかりおそろかになってしまった(汗)
そんな中、久しぶりに渋谷まで映画を観に行った。思い切ってル・シネマ二本立て(笑)。一本目はウディ・アレンの話題作。 公式サイト 製作国=イギリス・アメリカ 姉の評価=★★★★ アレンとスカーレット・ヨハンソンの掛け合いが、この作品の一番の売りだろう。だからこそ★ひとつ減・・・というか、私にはそれ以上の評価が出来ない、と言うのが本音である。二人の小気味よい、漫才のような会話がストーリーを鮮やかに縁取ってくれているのだが、いかんせん字幕でしか会話を理解できない。多分、ネイティブレベルで二人の掛け合いを楽しめる方には、ものすごく笑えるコメディ映画に仕上がっているのだと思う。我ながら、本当に情けない話である(笑) とは言っても、アレンの前作『マッチポイント』などとは比較することは出来る。そうすると、やはり「物足りない」という言葉が出てきてしまう。『マッチポイント』や『ギター弾きの恋』など、アレン作品の中でも特に完成度が高いと感じるものと比べると、若干作り方が甘い感じがするというか。しかし、ロンドン第二作目の本作、ニューヨーク時代後期(笑)の作品よりは、ずいぶん良くなってるような気がする。ロンドンでの新境地を、これからも楽しみにしたい。 今まで意識してたわけではないが、スカーレット・ヨハンソンの作品に触れる機会は多かった。今回のアレン相手のタッグ漫才は、今まで鑑賞して来た中で最高に良かったと思う。『ロスト・イン・トランスレーション』の彼女と同じぐらい好きだ。コミカルでテンポが良くて・・・英語がわからないなりに、彼女とアレンの作り出す心地よいテンポに、思わずうっとりしてしまった(笑)。またアレンと共演して欲しいな。今度こそ本当の親子の役でどうだろうか?? |
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2007 10,22 01:07 |
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久しぶりに時間が出来たのに映画を鑑賞した。ジュゼッペ・トルナトーレ監督作という以外何も知らず、上映時間が都合にあってるという、それだけの理由で選んだのがこの作品。
公式サイト 製作国=イタリア 姉の評価=★★★★ ゆるい・・・このタイトルはゆるすぎる・・・。 『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』のような作品を期待して観に行くと、間違いなくショックを受けるだろう。既存のトルナトーレ作品とまるきり違う作り方。衝撃的な映像だらけの、サスペンスタッチの人間ドラマだ。『題名のない子守唄』?馬鹿言え。これは『未知の女』(英語題直訳)って、ある意味ホラーよりも恐ろしい映画なのだ。 トルナトーレと言えば、『マレーナ』で人間の卑しい感情をこれでもかと描いていたのを思い出すが、この作品は、『マレーナ』以上にむき出しの女の感情を描いている。「母性を秘めた全ての女性に捧げる」なんて宣伝文句がつけられているが、はっきり言おう。妊娠中の方、授乳中の方には、この映画はオススメできません。むしろ観ないで下さい。 以下の記述には、作品のネタバレと、管理人・姉の生々しい告白が含まれます。読まれて気分を害されても責任は負いかねますので、興味のある方は、何卒承知の上で反転なさってください。 (ネタバレ&告白ここから)凄まじく、そして生々しい、傷つけられ奪われた母性愛を取り戻そうとする、主人公イレーナの物語。終盤まで、彼女の目的がわからず、執拗なまでにアダケル家につきまとう彼女の行動が、ただただ不気味で仕方がなかった。が、少女テアが、実はイレーナの娘なんだと明かされた瞬間、その不気味さは一転、愚かだけど限りなく深くてあたたかい、愛の溢れる行動に見えてしまう。まるで魔法のような瞬間だった。トルナトーレの、女性を、人間を観察する目の鋭さと温かさを、しみるように感じる作品だった。完成度の高い、素晴らしい映画だと思う。 しかし同時に、あまりにも生々しい描写が多く、とても辛い映画だったのも本当である。特に出産シーンと、産んだばかりの赤ん坊を奪われて、パンパンに張った胸から母乳をポタポタしたたらせながら号泣するシーン・・・今思い出しても辛くなる。鑑賞した日、辛すぎて私は娘の顔をまともに見ることが出来なかった。一年も前に授乳は終わってるのに、子宮が痛み、産道が痛み、胸まで張った。産前産後の身体的・精神的苦しみは、同じ女であっても、それを経験した者にしか理解できない。しかしトルナトーレは、スクリーンに見事にそれを表現している。私はそれを、自分の身体で実感した。 妊娠中の方、授乳中の方にこの作品をオススメできない理由は、ずばりそこにある。産前産後の心身の負荷を負ってる最中の方には、あまりにも刺激が強すぎる映像が多い。 ただ辛かった分、ラストのテアの笑顔には本当に癒された。親子の絆って、産んだかどうか以上に、どう関わってきたかが重要なのだろう。テアは結局イレーナの娘ではなかったが、イレーナがテアに向けていた愛情は本物。この作品には多くのことが語られているが、その中でも、このことは私の心に一番響いた。(ネタバレ&告白ここまで) オススメできない客層がいる点を考え、★ひとつ減とした。鑑賞予定のある方は、冒頭からショッキングな映像が続くので、その辺ご注意を。 |
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