2024 05,19 07:22 |
|
2008 11,15 00:32 |
|
またもや今更の感想になってしまう・・・
公式サイト 製作国=アメリカ 姉の評価=★★★★☆(白星は★0.5) 10月に鑑賞した、「秋の超話題作」。興味はなかったが、たまたま時間が出来たとき、スケジュールがいちばん都合よかったので観にいった。いやぁ・・・“話題作”は伊達じゃない・・・。ショーン・ペンの監督作は始めて鑑賞するが、思いのほかしっかりした作りの作品になっていて、圧倒されてしまった。 有名大学を優秀な成績で卒業し、ロー・スクールに通う22歳のクリスは、ある日、家族も貯金も捨て、一人、文明の外に旅に出る。2年間の放浪の末、アラスカの荒野にたどり着き、「土地の与えるものだけで生きる」生活を始める。お恥ずかしながら、この映画を観るまで、クリストファー・マッカンドレスという人物を知らず、この作品が実話を元に作られていたということすら知らなかった。物質社会に疑問を持ち、その全てを捨て去る決意をし、アラスカの荒野で死体となって発見されたクリス。彼の足跡をたどるこの作品は、賛否両論分かれるだろうな、と、初盤で感じた私である。 それはクリスの卒業式のシーン。「お祝いに新しい車を買ってやろう」という両親に、彼は「いらないよ。何でも物・物・物、うんざりだ!」と怒鳴りつける。今では子供を持つ身となった自分には、どちらの気持ちも理解できる。親は安全な車に乗ってほしいと思っているだけなのに、息子は、物質社会を押し付けられたように感じ、不快に思ってしまう。どちらの側に感情の比重がいくかで、この作品の評価は変わってくるのではないだろうか。 世間のしがらみや物質社会との縁を完全に断ち切り、綿密な計画の下、家族の前から“失踪”してみせたクリス。「自分探しの旅」という表現をこの作品の公式サイトなどで見かけたが、「自分探し」というのは、ちょっと違うのではないかと個人的には思った。クリスは、自分を見失ったからではなく、しっかりした自分の信念があったからこそ、全てを捨てて(名前すら捨てて)旅立ったのではないのだろうか。私も時々、何でも「物・物・物」の社会に疑問を抱くことがある。しかしクリスは、それを疑問のままにしておくことが出来なかった。悶々と悩むのではなく、その疑問に自分なりの答えを出した結果が、こうだった。勿論彼が旅立つ理由はそれだけではないが、私は彼のそんな部分に深い共感を覚え、いつまでも悩まず断ち切れた彼を、勇敢だと思った。クリスの思いは、疑問は、驚くほど純粋。旅先で出会う人々と触れ合う彼が聖人のように見える瞬間もたびたびあったほどだった。 しかし、家族の側からすれば、こんな身勝手で許しがたい話はないだろう。ある日突然、息子が自分たちの前から姿を消した。事件なのか事故なのかもわからず、生死さえ知るすべもない。彼が失踪してからの2年間の家族のかたがたの心の傷を思うと、たまらない気分になる。人間なら誰だって、自分を絆で縛り付ける人間たちをうとましく思うことがある。だが、そんな人間たちが周囲にいてくれるから生きていけるということを、クリスは理解できなかった。 死の間際、クリスはこう綴る「幸せとは、分かち合う人がいてはじめて味わうことができる」。孤独に震えながら綴る文字には、胸をわしづかみにされるかのような説得力があった。結局、クリスが旅を続けていられたのは、「最後に帰る場所がある」という安心感がどこかにあったからなんだろうな、と、そのとき感じた。激流に帰る道をふさがれ、毒草に体力を奪われ、家に帰る道を完全に断たれた時、彼は本当に「孤独」になったのだろう。 賛否両論あるだろうけど、「力作」と呼ぶに相応しい作品。人それぞれ色々に感じ方は違うだろうけど、ボリューム感だけは保障できる。映像としても、アラスカの荒野の美しさと厳しさを直接脳髄に訴えるような迫力があってよかった。★5つつけたいところだが、クリスの生き方に反感を感じる方もいるだろうことを考慮して、0.5減にしてみた。機会があったら是非ごらんになって、ご自分なりの感じ方を発見していただきたい。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |