2024 09,21 21:25 |
|
2008 03,17 23:43 |
|
コーエン兄弟最新作にして、アカデミー作品賞受賞作。
公式サイト 製作国=アメリカ 姉の評価=★★★☆(白星は★0.5) 何だろう・・・ここまで自分の評価が定まらない作品は久しぶりである。作品の意図がいまいち飲み込めないのに、印象にだけは強烈に残ってしまう。後味も悪い。この記事を書く前に、解釈の仕方のヒントがほしくて、あちこちの映画レビューを駆けずり回ってしまった。一部のコーエンファンの方が仰る「コーエン・マジック」に、まんまとはまってしまったのだろうか? 原作小説のタイトルは『血と暴力の国』、原題は“NO COUNTRY FOR OLD MEN”。このいづれかが頭に入っていれば、もう少し判りやすい映画になったのかも知れない。「老人に国はない」=「昔のアメリカは死んでしまった」ということなのだろう。ストーリーは、麻薬売買絡みの銃撃戦現場から金を持ち逃げしたモスと、それを追う殺し屋シガーを描いている。目の前の大金になりふり構わずのモスと、淡々と人を殺していくシガーは、それぞれ現代アメリカの象徴。彼らを追う役目を負いながら、結果的にそれを放棄してしまう老保安官のベルは“老人”の代表・・・と考えれば、少しは作品が見えてくるような気がする。 以下、ネタバレ感想です。 まずは、大金を持ち逃げするモス。金に目がくらんでしまう部分も勿論そうなのだが、逃亡する先々で彼が遭遇する状況が、今のアメリカなのではないか、と思った。モーテルの主人やタクシードライバーの判をしたような台詞「面倒はごめんだ」。しかしそんな彼らも、チップひとつで黙らせられる。「若いからって、ヒッチハイクは危険だ」という忠告。メキシコ国境から入国する際は、ベトナムでの戦歴を話しただけでアメリカ国民だと証明してしまう。そしてラストは、無残にも殺されてしまう・・・。 そして殺人鬼シガー。コイントスで、相手の生死を決めさせるシーン。人生には不条理さや理不尽が付きまとうのだというのを、嫌でも思い知らされる描写。使用する武器は酸素ボンベや圧縮銃。保安官ベルの、「今では牛を殺すのにショットガンを使うんだ」と嘆くシーンと不気味にだぶる。そしてラストは交通事故。声をかけてきた少年たちの善意を金で汚し、自分は骨を折りながらも逃げおおせる・・・。 保安官ベルは、かつて自分が守ってきた国が失われたのを嘆き、投げ捨ててしまった・・・ ・・・そんな風に解釈すれば、「現代の病んだアメリカを描いている」とか、「不条理な人生を表現している」なんて、それらしい感想もでてくるが、そんな単純な構造の映画だとも思えないしな・・・。(ネタバレここまで)要するに、明確な答えを作品には盛り込まず、観客の解釈にゆだねる部分の多い作品なんだと思う。そういう意味で、映画を見慣れている人向けの作品だと思った。 個人的に、こういう含みの多い映画は好きなのだが、この作品がアカデミー賞というのはどうだろう、と思った。世界各国で催されている映画祭には、それぞれ個性とか、方向性があると私は考えている。これが、芸術性や作家性を尊重するカンヌでの受賞ならわかるのだが、エンターテイメントを重視してきたアカデミー賞で作品賞だなんて・・・。ハリウッドが良い方向に変わってきたのか、それとも、ハリウッドにはもう、名作と呼べる娯楽映画を作る力がないのか・・・いづれ明らかになるだろう。 この作品で特記すべきなのは、音楽による演出が、一切なされてないことだ。その程度たるや、ドグマ映画のほうがよっぽど音楽が流れてるぐらい。BGMに頼らずにあれだけの緊迫感や緊張感が作れるコーエン兄弟は、本当にすごい監督さんなのだな、と思った。また、アカデミー賞助演男優賞となったハビエル・バルデム・・・彼がスクリーンに登場するだけで、凍りつくような不気味さに包まれる。淡々と、職人のように人を殺す様はまさに怪物。ガスストップでの主人との会話のシーンなど、恐ろしくてたまらなかった。個人的には『海を飛ぶ夢』の良い演技をしてると思うが、助演男優賞の受賞には納得できた。あの怪演をスクリーンで観られて本当に良かった。 中盤までは恐怖と緊張感で身が引き締まりっぱなしだったが、実を言うと、後半だれて、少し眠くなっていた私である(苦笑)。解釈に手助けが必要だった部分と、後半の眠気を考えて、★1.5減としてみた。すっきりしない映画がが苦手な方と、流血シーンのお嫌いな方は、鑑賞を避けられたほうがいいでしょう。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |